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生成AIの利用状況を可視化する方法|利用ログで課題を見つけ、社内活用を広げる

生成AIを導入したものの、「一部の部署しか使っていない」「初めは使われたが次第に利用されなくなった」といった状況に直面している企業は少なくありません。実際、PwC Japanグループの2026年春調査では、日本企業のうち生成AI活用で「期待を大きく上回る効果」を創出できていると回答した企業は9%にとどまりました[1]。

多くの企業は「活用事例を共有する」「研修を実施する」といった前向きな施策に注力します。しかし実際に全社展開を加速させるのは、利用ログを可視化して「誰が・どのように使っていないか」を把握し、ヒアリングやアンケートと組み合わせて阻害要因を特定することです。本記事では、利用状況の可視化方法と、そこから課題を見つけて社内活用を広げる実践法を解説します。

なぜ生成AIの利用状況を可視化する必要があるのか

全社展開が進まない理由は「使われていない原因」の見えなさ

生成AIが自社や業界を変革すると考える経営幹部は97%に達します[2]。一方で、導入後に活用を定着させ、成果につなげるには、ツール配布だけでなく利用状況の可視化と継続的な改善が欠かせません。

導入直後の利用回数だけでは、定着しているかを判断できません。初期に試用されても、継続的な業務利用へつながらない場合があるためです。利用状況を可視化することで、「IT部門は活発に利用しているが営業部門はほとんど使っていない」「初月は利用されたが2ヶ月目から急減した」といった具体的な課題が見えてきます。

データで課題を特定することが成功の鍵

利用ログの可視化は、データ駆動型の意思決定を可能にします。どの部署・業務・利用段階に課題があるかを把握し、教育、ユースケース整備、利用ルールの見直しといった施策の優先順位を決めることができます。

さらに、利用ログからはユーザーの行動パターンも読み取れます。ある研究では、懐疑的だったユーザー(Skeptics)の40%が、利用を通じて好意的な姿勢(Cautiously Positive)に移行したことが示されています[3]。こうしたペルソナの変化を追跡することで、段階的な展開戦略を設計できます。

利用ログで可視化すべき項目

基本的な利用状況の指標

アクティブユーザー数と利用率を部署別・役職別に集計することで、特定の層で利用が進んでいない実態が見えます。

利用頻度や継続利用率からは、定着の傾向を確認できます。毎日使うヘビーユーザーと、月に一度しか使わないライトユーザーの割合を把握することで、「試しただけで終わっている層」を特定できます。なお、利用率だけで社内AIの効果を判断できない理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。

機能別の利用状況も重要です。文章生成、要約、翻訳など、どの機能がよく使われているかを可視化することで、ニーズの高い用途が明確になります。

課題発見につながる行動パターン

エラー・ブロック傾向からは、どのような入力が拒否されているかが分かります。ブロックが多い場合は、利用ルールの周知不足や入力支援の不足が起きている可能性があります。正当な業務利用でもブロックが頻発する場合は、フィルタ設定や利用ルールの見直しが必要です。

初回利用から継続利用への移行率も重要です。継続率が低い場合は、初回体験での期待と結果のギャップが大きい可能性があります。実際、米国の州運輸局で実施された8週間の生成AI試行では、実利用後に知覚された有用性が低下する傾向が報告されています[3]。

公式環境の利用が伸びない理由も把握すべきです。現場から生成AI活用のニーズや相談が継続的に寄せられる一方で、公式環境の利用が少ない場合は、使い勝手や周知に課題がある可能性があります。匿名アンケートや利用相談の窓口を通じて実態を把握し、承認済み環境への誘導を進めましょう。

利用ログから課題を発見する方法

部署別・役割別の利用状況から見える課題

利用率が極端に低い部署がある場合、その部署に固有の阻害要因が存在します。現場業務が忙しい、既存フローとの接続が分からない、管理職が懐疑的といった理由が考えられます。ヒアリングと組み合わせることで具体的な課題が明らかになります。

特定の個人に利用が集中している場合、他のメンバーは「自分には関係ない」と感じている可能性があります。活用事例を横展開し、「自分の業務でも使える」と認識してもらう必要があります。

役職別の利用状況も重要です。管理職の利用率が低い場合、現場への推奨や活用事例の共有が十分に行われていない可能性があります。全社展開を進める際は、管理職層への働きかけが鍵になります。

利用パターンから読み取る定着の阻害要因

初月の利用が多く、その後急減するパターンは、初期の期待値と利用体験に差があった、日常業務に組み込む場面が明確でない、利用方法の支援が不足している、といった課題を示唆します。ログ上の変化を手がかりに、利用者へのヒアリングで要因を確認しましょう。

特定の時間帯に利用が集中するパターンがある場合、会議前後、日報作成、問い合わせ対応など、特定の業務場面で活用されている可能性があります。ログ上の傾向を手がかりに、ヒアリングで実際の利用業務を確認しましょう。

エラー率の推移も重要です。初期からエラーやブロックが多い場合は、入力ルールの理解不足、フィルタ設定の過剰反応、ユースケースとルールの不整合などが起きている可能性があります。ブロック理由を分類し、利用者への聞き取りと設定確認を行いましょう。

課題別の対応策と全社展開への活かし方

利用率が低い部署への対応

業務別ユースケースの提示は、有効な施策の一つです。営業部門なら商談準備や提案書作成、経理部門なら証憑内容の確認補助や仕訳候補の作成といった、その部署の具体的な業務での活用例を示します。

管理職への働きかけも重要です。管理職自身が使うことで、「これは業務に使える」というメッセージが現場に伝わります。

初期の期待値調整も欠かせません。「AIがすべて自動でやってくれる」という誤解を避け、「下書きを作る」「選択肢を提示する」といった現実的な役割を示します。

利用が偏っている場合の横展開施策

活用事例の社内共有では、「誰が・どの業務で・どう使っているか」を具体的に示します。たとえば「議事録作成にかかる時間が30分から10分に短縮された」のように、対象業務・比較条件・削減時間を示せると説得力が増します。

ヘビーユーザーからのフィードバック収集も有効です。どのプロンプトが効果的か、どの業務に向いているかを聞き取り、ナレッジとして蓄積します。

段階的な展開も戦略の一つです。先進的な部署で成果を出し、その事例を持って次の部署へ展開します。米国の州運輸局における8週間の生成AI試行では、当初懐疑的だった利用者の一部が前向きな層へ移行した一方、当初の期待が高かった利用者の評価が下がる動きも見られました[3]。利用者の受け止め方は一様ではないため、ログとヒアリングを組み合わせて変化を把握することが重要です。

利用ログを取得・活用する際の注意点

プライバシーとガバナンスの観点

ログ取得の目的と範囲を明文化することが第一歩です。個人の監視ではなく全社的な課題発見が目的であることを周知し、取得するデータ・閲覧者・保存期間を社内規程で定めます。

集計値中心の運用も重要です。平時は部署別・機能別の集計データを確認し、個別ログの確認は必要な場面に限定します。

データの匿名化と保護も欠かせません。アクセス権限を適切に設定し、ログデータ自体のセキュリティを確保します。

プロンプトや生成結果には機密情報や個人情報が含まれる可能性があります。平時の分析は集計データを基本とし、個別の会話内容を確認する場合は、目的・閲覧権限・保存期間を明確にし、必要最小限にとどめます。

また、利用ログを人事評価や懲戒の目的へ転用すると、社員が公式環境を避け、シャドーAIを助長するおそれがあります。利用ログは監視ではなく、利用環境・教育・業務設計の改善に活用しましょう。

継続的な改善サイクルの設計

定期的なレビューを設計します。月次で利用状況を確認し、前月と比較して利用率が上がっているか確認します。四半期ごとには、部署別の利用状況を経営層に報告します。

フィードバックループの構築も重要です。利用ログから見えた課題に対して施策を実施し、その効果を再度ログで検証します。このサイクルを回すことで、効果的な施策が明確になります。

ユーザーの声との統合も忘れてはなりません。ログは客観的なデータを提供しますが、「なぜ使わないのか」といった主観的な理由までは分かりません。定期的なアンケートやヒアリングと組み合わせることで、ログだけでは見えない課題が明らかになります。

さいごに

生成AIの利用状況を可視化することは、単なる数字の把握ではありません。「誰が・どのように利用していないか」を把握し、ヒアリングやアンケートと組み合わせて全社展開を阻む要因を特定する手段です。

期待を大きく上回る効果を創出できている企業が9%にとどまる現実は、「とりあえず導入して活用事例を共有する」だけでは不十分であることを示しています。利用ログを継続的に可視化し、データに基づいて課題を発見し、対策を講じるサイクルを回すことが、全社展開を加速させる鍵となります。

まずは基本的な利用状況(アクティブユーザー数、部署別利用率、利用頻度)を把握し、そこから見える課題に対して具体的な施策を打つことから始めてみてください。

Smart Generative Chatでは、利用ログや、部署タグ単位のトークン消費量・予想利用金額を確認できる管理・分析機能を提供しています。利用状況をもとに、活用の偏りや定着課題を把握し、教育、ユースケース整備、利用ルールの見直しにつなげたい場合は、ぜひご相談ください。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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