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企業向け生成AI活用ガイド|業務別の活用例と社内展開の進め方

2026年、企業の生成AI活用は、個人の業務効率化から、部門横断の業務プロセス設計へとテーマが広がっています。Microsoftが2026年7月に公表した記事では、日経225企業の87%がAIエージェントを業務で活用しているとされています[1]。一方で、導入効果を継続的な成果につなげるには、ツールの配布だけでなく、データ整備、権限管理、業務フロー、評価指標を一体で設計する必要があります。本記事では、業務別の具体的な活用例と、社内展開を成功させるための実践的な進め方を解説します。

2026年の企業AI活用が「業務変革」にシフトした理由

AIエージェントの進化で業務設計の選択肢が広がった

2026年に入り、主要AIプラットフォームではエージェント機能やコーディング支援機能の強化が進んでいます。Anthropicは「Opus 5」「Sonnet 5」を発表し、コーディングやエージェント型タスクにおける性能強化を打ち出しています[2]。MicrosoftはCopilot Coworkの一般提供を開始しました[3]。また、コーディング用途向けのMAI-Code-1.1-Flashでは、2026年6月に発表された前世代モデルと比べて、4分の1のコストで高品質なコード生成を実現するとしています[4]。

こうした技術進化により、AIの活用範囲は、個別の文章生成から、業務プロセス全体を支援するAIエージェントへと広がりつつあります。AI活用を継続的な成果につなげるには、AIツールを個別業務に導入するだけでなく、業務フロー、データ、権限、評価指標を含めて見直す視点が重要です。

成果指標の転換が示す本質的な変化

従来、AI導入の成果は「作業時間が何%削減されたか」「コストがいくら下がったか」で測定されることが一般的でした。一方、先進的な企業では、成果指標を「業務プロセスや顧客提供価値をどこまで改善できたか」へと広げる動きも見られます[5]。これは、部分最適(個別業務の効率化)から全体最適(業務プロセスの再設計)への転換を意味します。

AIの導入だけで業務変革が実現するわけではありません。データ整備、業務フローの見直し、利用ルール、権限管理、効果測定までを一体で設計して初めて、AI活用を継続的な成果につなげやすくなります。

業務別の生成AI活用例

以下では、業務別に想定される生成AIの活用例と、人が確認・判断すべきポイントを紹介します。

研究開発・創薬業務でのAI活用

JCRファーマの事例では、Claude Code on AWSを活用した創薬研究・業務の加速が紹介されています[6]。一般に、研究開発業務では、論文・データの整理、解析コードの作成支援、検討論点の洗い出しなどに生成AIを活用できる可能性があります。

研究開発部門では、論文検索、実験データの整理、仮説検討に必要な情報整理や論点抽出といった作業にAIを活用できると考えられます。ただし、専門性の高い業務へAIを導入するには、業務特性に応じたモデル選定とデータ整備が不可欠です。

具体的には、AIに任せる範囲として、関連論文の検索・要約、実験データの一次整理、仮説候補の列挙があります。一方、人が担う範囲として、科学的妥当性の最終判断、実験計画の決定、論文の査読・投稿があります。AIはあくまで情報整理と候補提示を支援し、専門的な判断は研究者が担う設計が重要です。

営業・マーケティング業務での情報収集と提案準備

営業部門では、顧客情報の整理、業界動向の把握、提案資料の下書き作成にAIを活用できます。AIエージェントは、アクセス権限や外部データ連携を適切に設計することで、必要な社内外の情報を整理し、顧客課題に合わせた提案の論点を洗い出すことができます。

マーケティング部門では、市場調査、競合分析、企画の論点整理にAIを活用できます。ただし、最終判断、対外発信、重要な意思決定は、責任者が確認・承認する運用が必要です。

AIに任せる範囲としては、社内データベースからの顧客情報抽出、業界ニュースの要約、提案資料の初稿作成があります。一方、人が担う範囲としては、顧客の真の課題の特定、提案内容の最終決定、商談での対応判断、価格交渉があります。AIが整理した情報を基に、営業担当者が顧客との関係性や商談の文脈を踏まえて判断することが重要です。

人事・総務業務での問い合わせ対応と文書管理

人事・総務部門では、社内問い合わせ対応、規程案内、文書要約にAIを活用できます。社内文書を検索・参照して回答を生成するRAG(検索拡張生成)を活用すれば、従業員からの問い合わせに対する一次回答の迅速化が期待できます。ただし、回答精度を確保するには、規程の正本管理、更新責任者の明確化、参照元の表示といったデータ・運用設計が欠かせません。

AIに任せる範囲としては、就業規則や人事規程の該当箇所の検索、一次回答の生成、問い合わせ内容の分類があります。一方、人が担う範囲としては、例外的なケースの判断、制度解釈の最終確認、規程改定の判断、センシティブな相談への対応があります。特に、労務管理や個人情報に関わる内容は、AIが提示した情報を人事担当者が必ず確認してから回答する運用が必要です。

導入テーマを具体化する際は、IPAのデジタル事例データベースなども参考になります。同業種・近い業務特性を持つ企業が、どの業務課題から着手し、どのように定着を進めているかを確認すると、自社の優先順位を検討しやすくなります[7]。

社内展開を成功させる進め方

ステップ1:プラットフォーム思考で設計する

社内展開では、個別ツールを導入するだけでなく、AIを業務横断で活用するためのプラットフォームとして設計する視点が重要です。具体的には、社内文書へのアクセス権限、利用状況の可視化、業務ごとのシナリオ標準化を一体で整備します。

プラットフォーム思考では、AIツールを配布するだけでなく、AIと人の役割分担を踏まえて業務プロセス全体を見直します。たとえば問い合わせ対応では、「AIが規程を検索して一次回答を作成する→担当者が回答根拠と内容を確認する→必要に応じて個別対応する」というフローを設計します。

ステップ2:成果指標を「業務変革」に設定する

従来の「作業時間削減」だけでなく、「業務プロセスや顧客提供価値をどこまで改善できたか」を測定します。具体的には、削減できた時間を、提案品質の向上、顧客対応、判断業務などに振り向けられたかを評価します。

成果指標の例として、問い合わせ対応であれば「平均対応時間」に加えて「一次回答の自己解決率」「担当者が高度な業務に充てられる時間」「問い合わせ内容の分類精度」を測定します。営業業務であれば、「提案資料作成時間」だけでなく「商談準備の質の向上」「顧客理解の深さ」も評価対象とします。このように、効率化の先にある業務変革を可視化することが重要です。

KPIは、定量指標と定性指標に分けて設定すると評価しやすくなります。定量指標には、一次回答の自己解決率、回答作成時間、AI回答の修正率、問い合わせ分類の正解率などがあります。定性指標には、利用者満足度、回答根拠への納得感、営業担当者による商談準備のしやすさなどを設定します。

ステップ3:コストとセキュリティを事前に設計する

AI導入では、利用量の増加に伴うコスト管理も重要です。従量課金型のサービスでは、利用モデル、入力・出力トークン量、検索・外部連携の利用状況などによって費用が変動します。導入初期に利用想定や予算上限を設計していない場合、全社展開後に想定以上の費用が発生するおそれがあります。

セキュリティとガバナンスは、社内AI活用における重要な検討項目です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威の第3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出されました[8]。社内AI活用では、情報漏えいを防ぐ利用ルール、アクセス権限管理、利用ログの監査、回答根拠の確認を含めた運用設計が必要です。

社内展開では運用基盤も確認する

全社展開を前提に生成AIを導入する場合は、モデルの性能だけでなく、社内文書を参照するRAG、利用者・グループごとの権限設定と情報アクセス制御、利用ログの確認、業務別シナリオの標準化まで含めて検討することが重要です。Smart Generative Chatは、社内文書を活用するRAG、利用者・グループごとの権限設定、トークン消費量や利用コストの可視化、業務別シナリオの作成といった、社内AI活用の運用を支える機能を備えています。まずは、自社の問い合わせ対応、規程検索、報告書作成など、対象業務を一つ決めて検証するとよいでしょう。

さいごに

2026年、企業の生成AI活用では、個別のツール導入にとどまらず、業務プロセスの見直しや組織内の知識活用までを視野に入れる動きが広がっています。

社内展開を成功させるには、データ整備、権限管理、業務フロー、利用ルール、成果指標を一体で設計することが重要です。業務別の活用例を参考に、自社の課題に合わせた導入を進めてください。

社内AI活用の運用基盤を検討されている方は、Smart Generative Chatをご確認ください。RAG、権限管理、コスト可視化、業務別シナリオなど、社内AIの全社展開を支える機能を備えています。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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