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稟議が滞留する理由|起案・回覧のAI自動化で改善する

多くの企業で稟議の承認が遅れ、意思決定が停滞しています。しかし、この滞留の原因を「承認者が忙しい」「回覧ルートが長い」という構造的問題として捉えているなら、重要な視点を見落としている可能性があります。現場で見落とされがちなのが、起案段階の品質のばらつきです。

本記事では、稟議が滞留する構造的な原因を整理し、AI自動化による解決策を提示します。

稟議が滞留する本質的な理由

承認フローだけでなく起案品質も問題

稟議の滞留を「承認者が処理しきれない」「回覧ルートが複雑」という問題として捉え、ワークフローシステムを導入する企業は少なくありません。しかし、システム化しても滞留が解消しないことがあります。その一因として、起案段階の品質のばらつきが挙げられます。

起案内容に不備があると、承認者は追加の確認や差し戻しを行わざるを得ません。具体的には、記載項目の漏れ、根拠資料の不足、フォーマットの不統一などが挙げられます。たとえば、予算根拠が曖昧な稟議や、関連部署への確認が済んでいない稟議は、承認者が詳細を問い合わせる必要があり、その都度プロセスが停滞します。

さらに、承認者が複数の稟議を並行処理している場合、不備のある稟議は後回しにされる傾向があります。不備がある稟議は追加確認が必要となり、承認者の処理が遅れがちです。結果として、起案品質の低い稟議はますます滞留しやすくなります。このように、起案段階の不備が承認プロセス全体を停滞させ、結果として滞留を生み出しているのです。

実際、経費精算システムに経費規定自動チェック機能を導入したぺんてるでは、申請時の入力漏れや誤りを抑制し、差し戻し件数を約70%削減しました[1]。稟議業務でも同様のアプローチで起案品質を向上できると考えられます。

起案者のスキルに依存する構造

起案の品質は、起案者の経験や知識に大きく依存します。新人や異動したばかりの担当者は、過去の稟議を参照しながら作成しますが、組織ごとに暗黙のルールが異なるため、適切な記載内容を判断するのは容易ではありません。たとえば、ある部署では詳細な費用対効果の記載が求められる一方、別の部署では簡潔な要約が好まれるといった違いがあります。

また、起案時に必要な情報を収集する際、社内の複数部署に問い合わせが必要になるケースもあります。関連部署が複数にまたがる場合、それぞれの担当者に確認を取るだけで数日を要することも珍しくありません。この情報収集プロセス自体が時間を要し、起案が遅延する一因となっています。

さらに、過去の稟議が体系的に管理されていない組織では、起案者は類似案件を探すだけで多大な時間を費やします。紙ベースやローカルフォルダに散在した稟議を手作業で探し、参考になる記載例を見つけ出す作業は、非効率です。結果として、起案者のスキルに依存した属人的な業務構造が、滞留を助長しているのです。

AI自動化で起案品質を標準化する

起案支援AIで記載漏れを防ぐ

起案支援にAIを活用すれば、記載項目の漏れや不備を事前に検出できます。AIは過去の承認済み稟議をRAG(Retrieval-Augmented Generation)で参照し、類似案件の記載パターンを提示します。社内文書を横断的に検索できる仕組みや、起案フォーマットをあらかじめ定義しておく機能を組み合わせることで経験に依存しない標準化が可能になります。

たとえば、新規設備投資の稟議を起案する際、AIは過去の類似案件を抽出し、必要な記載項目をリストアップします。費用対効果の算出方法、関連部署への確認事項、添付すべき見積書の種類など、承認に必要な要素を事前に提示することで、起案者は漏れなく情報を盛り込めます。経験の浅い担当者でも、AIのガイドに従えば品質のばらつきを抑えられます。

また、AIは起案内容を自動でチェックし、不足している情報や曖昧な表現を指摘します。予算根拠が不明確な場合や、関連部署への確認が必要な項目が記載されていない場合、AIが起案者に追加入力を促します。さらに、過去の承認データを分析し、承認基準や差し戻し理由をもとに確認観点を提示できます。このプロセスにより、承認者による差し戻しを減らせます。

回覧業務をAIエージェントで自動化する

起案後の回覧業務も、AIエージェントで自動化できます。AIは稟議内容を解析し、適切な承認者の候補を提示できます。承認ルートが複雑な組織でも、AIが権限規程や過去の承認パターンを参照し、適切なルートの候補を提示します。予算規模や部署横断の有無に応じて、必要な承認者候補を抽出し、効率的な回覧順序の設定を支援します。さらに、情報検索や条件分岐を組み合わせた業務ワークフロー機能を活用すれば、起案内容の確認や要約、承認ルート候補提示などの定型作業を自動化できます。

さらに、ワークフローシステムと連携すれば、承認者の処理状況を確認し、一定期間応答がない場合にリマインドを送信することも可能です。社内規程で代理承認が認められている場合は、既存ワークフローとの連携により、代理承認候補の提示やリマインド支援が可能です。

加えて、AIは稟議内容を要約し、承認者が短時間で判断できるようサポートします。承認者は要約を読むだけで要点を把握でき、詳細を確認したい箇所だけを深掘りできます。このような自動化により、承認フローの停滞を抑え、意思決定の迅速化を支援できます。

業務自動化の効果と導入ステップ

類似業務での工数削減事例

AIを活用した業務自動化の効果は、すでに実証されています。デロイト トーマツは、内部監査・J-SOX評価業務において、AIエージェントを対象案件20件に適用し、証憑の評価実施・調書作成の業務工数を50%以上削減しました[2]。書類確認や評価業務を伴う領域であり、稟議業務への応用も期待できます。

内部監査では、従来は監査人が手作業で書類をチェックし、記載内容の整合性を確認していました。AIエージェントにより、証憑評価や調書作成の一部が自動化され、監査人は例外的なケースの判断に集中しやすくなると考えられます。稟議業務でも、起案内容のチェックや承認ルートの候補提示などをAIが支援することで、起案者と承認者の負担を軽減できる可能性があります。

稟議業務においても、起案支援と回覧業務の効率化を組み合わせることで、文書確認や要約など一部工程での工数削減が期待できます。実際、ワークフローシステムの導入により、稟議決裁期間を40%削減[3]した事例が報告されています。特に、承認者が複数の稟議を並行処理する必要がある組織では、起案品質の向上が承認スピードの向上に直結します。起案段階で不備が解消されれば、承認者は判断に専念でき、差し戻しや追加確認の手間が不要になります。

段階的な導入で効果を最大化する

AI自動化を導入する際は、段階的なアプローチが有効です。まず、起案支援AIを特定の部署や案件種別に限定して試験導入し、効果を検証します。AIが提示する記載パターンや指摘内容が実務に適合しているかを確認します。たとえば、経費稟議や契約稟議など、頻度の高い案件種別から導入を始めることで、効果を早期に実感できます。

試験導入では、起案者からのフィードバックを収集し、AIの提案内容を調整します。実際に使いやすいと感じる機能を優先的に改善し、組織全体への展開前に精度を高めることが重要です。また、起案品質の向上により承認スピードがどの程度改善したかを数値で測定し、経営層への報告材料とします。

なお、導入時には利用者ごとの権限設定、監査ログの記録、データ保護といったセキュリティ・ガバナンスの整備も欠かせません。稟議には機密情報が含まれるため、誰がどの情報にアクセスできるかを明確に管理し、社内規程との整合性を保ちながら進めることが重要です。

次に、回覧業務の自動化を追加します。承認ルートの選定やリマインド機能を導入し、承認フローの停滞を防ぎます。AIが過去の承認パターンを学習し、適切なルートを提案することで回覧ミスや承認漏れを防げます。最終的には、起案から承認までの一連のプロセスをAIで一元管理し、組織全体の意思決定スピードを向上させます。

さいごに

稟議の滞留は、承認者の多忙さや回覧ルートの複雑さだけが原因ではありません。起案段階の品質のばらつきが、承認プロセス全体を停滞させているケースが多いのです。承認フローを効率化しても、起案内容に不備があれば差し戻しは避けられず、滞留は解消しません。

AI自動化により、起案支援と回覧業務の標準化を実現すれば、滞留の改善につなげられます。経験に依存せず、品質のばらつきを抑えた稟議を作成できる環境を整えることが意思決定の迅速化につながります。

こうした稟議業務の効率化には、企業向け社内AIプラットフォーム「Smart Generative Chat」のような専用環境が活用できます。社内文書のRAG検索、起案フォーマットの標準化、業務自動化ワークフロー、権限設定や監査ログといったガバナンス機能を組み合わせることで、セキュリティを確保しながら稟議プロセス全体を効率化できます。

稟議・申請業務でのAI活用にご興味がある方は、ぜひSmart Generative Chatの資料をご覧いただくか、導入のご相談をお気軽にお問い合わせください。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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