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インシデント対応計画の作り方|サイバー攻撃を想定した事前準備

企業を取り巻くサイバー空間の脅威は日々深刻化しています。情報漏洩やシステム停止といった重大なインシデントが発生すると、企業の信頼失墜や多額の損害につながりかねません。しかし、適切な事前準備と対応計画があれば、被害を最小限に抑えることが可能です。本記事では、サイバー攻撃を想定したインシデント対応計画の具体的な作り方について解説します。

サイバー攻撃の最新動向とリスク

代表的なサイバー攻撃手法

現代のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、企業規模を問わず標的となっています。代表的な攻撃手法としては、ランサムウェアによるデータ暗号化と身代金要求、フィッシングメールを起点とした情報窃取などが挙げられます。

特に注目すべきは、人的要因を突いた攻撃の増加です。2024年のデータでは、インシデント全体の60%にソーシャルエンジニアリングが関与していることが明らかになっています[1]。メール誤送信、パスワードの使い回し、フィッシング詐欺への誤応答など、技術的対策だけでは防ぎきれない脅威が主流となっているのです。

また、サプライチェーンを狙った攻撃も顕著に増えています。取引先の弱いセキュリティを突破口として、本命の標的企業へ侵入する手法は、防御が困難であるため企業間の連携強化が求められます。

最新のインシデント事例

警察庁が公開する統計データによれば、サイバー攻撃によるインシデント件数は年々増加傾向にあります[2]。令和5年から令和6年にかけても、ランサムウェア被害や不正アクセスによる情報流出が多数報告されており、業種や企業規模を問わず被害が拡大している状況です。

特に2025年には、日本を代表する大手企業での深刻な被害が相次ぎました。

アサヒグループホールディングスの事例(2025年9月) 2025年9月29日、アサヒグループホールディングスがランサムウェア攻撃を受け、国内の全業務システムが停止する重大なインシデントが発生しました。ランサムウェアグループ「Qilin」による攻撃とされ、ビールやお茶などの受注・出荷業務が長期間停止し、コンビニや飲食店への供給に深刻な影響が及びました。同社は情報流出の可能性も公表しており、サプライチェーン全体への影響は数十億円規模に達する可能性が指摘されています。

アスクルの事例(2025年10月) 2025年10月19日、オフィス用品通販大手のアスクルがランサムウェア攻撃を受け、物流システム(WMS)が停止しました。この攻撃により、「ASKUL」「LOHACO」「ソロエルアリーナ」などのサービスで受注・出荷が停止し、無印良品ネットストアなど取引先企業のサービスにも連鎖的な影響が発生しました。利用者の問い合わせ情報や仕入れ先情報の流出も確認され、12月上旬まで本格復旧に時間を要する事態となりました。

これらの事例から学ぶべき教訓は明確です。「自社は狙われない」という考えは通用せず、大手企業でも被害を防げない現実を直視し、いつ攻撃を受けてもおかしくない前提で備える必要があります。

サイバー攻撃への備えとインシデント対応計画

インシデント対応計画の必要性と導入メリット

インシデント対応計画とは、サイバー攻撃や情報漏洩が発生した際に、迅速かつ適切に対処するための行動指針を定めたものです。この計画を策定・実践している企業では、被害額や復旧時間が大幅に削減されることが実証されています。

具体的には、人材不足が高レベルの場合は侵害コストが574万ドルであったのに対し、低レベルまたは問題がない場合は398万ドルに抑えられています[3]。さらに、内部検知によりデータ侵害のライフサイクルは61日短縮される傾向が示されており、事前準備の経済的価値は極めて高いといえます。

また、対応計画の存在は社員の心理的安心感にもつながります。万が一の事態でも「何をすべきか」が明確であれば、パニックを防ぎ冷静な判断が可能になるのです。

初動対応と体制整備のポイント

インシデント発生時の初動対応は、被害の拡大を防ぐ最重要ポイントです。まず、インシデント対応チーム(CSIRT)を編成し、役割分担を明確にしておきましょう。チームには、IT部門だけでなく法務・広報・経営層も含めることが望ましいです。

次に、連絡体制を整備します。発見者から責任者への報告ルート、外部専門家への連絡手順、顧客や取引先への通知方法などを文書化し、全社員に周知することが不可欠です。夜間・休日でも迅速に連絡できる体制を構築しましょう。

さらに、証拠保全の手順も重要です。攻撃の痕跡やログは、原因究明や法的対応に必須となります。不用意な操作で証拠が消失しないよう、初動でのシステム操作ルールを定めておく必要があります。

インシデント発生時の具体的な対応プロセス

事前準備と継続的な訓練

優れた対応計画も、実際に機能しなければ意味がありません。そのため定期的な訓練が不可欠です。年に2回程度、シミュレーション訓練を実施し、計画の実効性を検証しましょう。

訓練では、実際のインシデントを想定したシナリオを用意します。たとえば「ランサムウェアに感染し、基幹システムが停止した」「顧客情報の流出が疑われる」といった状況設定のもと、各担当者がどう動くかを確認するのです。

訓練後は必ず振り返りを行い、課題を洗い出します。連絡に時間がかかった、判断基準が曖昧だった、といった問題点を改善し、計画をアップデートすることで、実戦での対応力が向上します。

発生時の優先対応と社内外コミュニケーション

インシデント発生時は、被害の封じ込めを最優先します。感染したシステムをネットワークから隔離し、拡散を防ぐことが第一です。同時に、被害状況の把握と記録を開始します。

社内コミュニケーションでは、正確な情報を迅速に共有することが重要です。不確実な情報での憶測や混乱を避けるため、公式な情報発信ルートを一本化しましょう。経営層への報告も速やかに行い、必要に応じて外部専門家の支援を要請します。

対外的なコミュニケーションも慎重に進めます。顧客や取引先への通知が必要な場合は、事実関係を整理したうえで誠実に説明することが信頼維持につながります。また、個人情報漏洩の可能性がある場合は、法令に基づく報告義務も発生するため、法務部門と連携しながら対応を進めましょう。

効果的なサイバー攻撃対策の実践方法

パスワード管理とセキュリティ基本対策

人的要因が多くのインシデントに関与している現状を踏まえると、基本的なセキュリティ対策の徹底が極めて重要です。特にパスワード管理は、最も基本的でありながら最も軽視されがちな領域です。

強固なパスワードポリシーを導入し、定期的な変更と複雑性要件を設定しましょう。パスワードの使い回しは絶対に避け、サービスごとに異なるパスワードを使用することが原則です。パスワード管理ツールの導入も効果的な選択肢となります。

加えて、多要素認証の導入を推奨します。パスワードに加えてスマートフォンでの認証コード入力など、複数の要素を組み合わせることで、たとえパスワードが漏洩しても不正アクセスを防げる可能性が高まります。

フィッシング・マルウェア防御の強化手法

フィッシング攻撃への対策では、社員教育が最重要です。Verizonのレポートによると、侵害全体の約60%に人的要因が関与しており[1]、疑わしいメールの報告件数が増えるほど、攻撃成功率は低下します。実際、適切な教育を受けた組織では、セキュリティ意識の向上により攻撃の被害を大幅に減らすことができます。

具体的には、定期的なフィッシングメール訓練を実施し、社員の警戒心を維持します。送信者アドレスの確認、リンク先URLの検証、添付ファイルの慎重な取り扱いといった基本動作を習慣化させることが重要です。

マルウェア対策としては、アンチウイルスソフトの導入と定義ファイルの自動更新が基本となります。さらに、OSやアプリケーションの脆弱性を突く攻撃を防ぐため、セキュリティパッチの適用を迅速に行う体制も整備しましょう。

インシデント後の組織的な復旧と再発防止

被害分析と再発防止策の策定

インシデント対応の最終段階は、徹底した原因分析と再発防止策の策定です。攻撃がどのように侵入したのか、なぜ検知が遅れたのか、対応のどこに課題があったのかを客観的に評価します。

この分析では、技術的側面だけでなく、人的・組織的要因も検討する必要があります。たとえば、報告体制の不備や判断の遅れが被害拡大につながったケースでは、プロセスの見直しが求められます。

分析結果をもとに具体的な改善策を策定し、実行計画に落とし込みます。システムの脆弱性修正、セキュリティツールの追加導入、業務プロセスの変更など、多角的なアプローチで再発防止を図りましょう。

社内教育と継続的な見直し

インシデント対応計画は「作って終わり」ではありません。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、対応計画も継続的にアップデートする必要があります。

定期的な社内教育を通じて、全社員のセキュリティ意識を維持・向上させることが重要です。インシデント事例を共有し、自社で起こりうる脅威として認識させることで、当事者意識が高まります。

また、年に一度は対応計画全体を見直し、組織体制の変更や新たな脅威への対応を反映させましょう。外部の専門家によるレビューを受けることも、客観的な評価を得る有効な手段です。

まとめ

サイバー攻撃によるインシデントは、もはや「起こるかもしれない」ではなく「いつ起こるか」という前提で備えるべき時代です。適切なインシデント対応計画を策定し、継続的な訓練と見直しを行うことで、被害を最小限に抑えることができます。

特に、人的要因が多くのインシデントに関与している現状では、技術的対策だけでなく、全社員を巻き込んだセキュリティ意識の醸成が不可欠です。基本的なパスワード管理やフィッシング対策の徹底から始め、組織全体のセキュリティレベルを底上げしていきましょう。

万が一のインシデント発生時には、迅速な初動対応と適切なコミュニケーションが被害拡大を防ぎます。今日から、自社のインシデント対応計画の策定・見直しに着手してはいかがでしょうか。

出典

この記事を書いた人

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ma_kanada

ソリューションサービス事業部

株式会社システムサポート フューチャーイノベーション事業本部 ソリューションサービス事業部。Webアプリの設計・開発を数多く手掛け、IoTやAIを利用したアプリケーションの開発に従事。現在はAIを活用したビジネスソリューションの研究・開発に携わっている。

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