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調査業務の属人化を削減|AIエージェントで情報収集を自動化する

「この案件の競合情報、○○さんしか知らない」――こうした属人化は、多くの企業で調査業務の課題となっています。市場調査、競合分析、法規制のウォッチング、導入事例の収集。情報を集めて整理する仕事は、特定の担当者に依存しがちです。

調査業務の属人化は、「どこを探すか」という探索スキルの問題だけではありません。本質は「どの情報源を信頼し、どう解釈するか」という判断にあります。この判断を標準化し、AIエージェントで公開情報の収集・整理を自動化することで、調査業務にかかる情報収集・整理の工数を削減できる可能性があります。

調査業務が属人化する構造的な理由

情報の信頼性判断に専門性が集約される

調査業務では、情報を探す作業だけでなく、「その情報を採用してよいか」「自社にとって何を意味するか」を判断する工程にも、多くの時間と専門性が求められます。どの情報源が信頼できるのか。どの統計データを採用すべきか。複数の情報源で見解が分かれたとき、どう解釈するか。こうした判断には、業界知識や過去の経験が必要です。

この判断プロセスは、マニュアル化しにくい性質を持ちます。ベテラン担当者の「このサイトの情報は古い」「この調査会社の数字は信頼できる」といった暗黙知を後任に引き継ぐのは容易ではなく、調査業務は特定の人に依存します。

調査結果が散逸し再利用されない

過去の調査結果が組織内に蓄積されていても、再利用する仕組みがなければ同じ調査を繰り返すことになります。レポートが個人のフォルダに保存されたままでは、別の部署が同じ調査を実施し直すことになります。

調査業務の属人化は、「調査スキルの属人化」と「調査結果の散逸」という二重の構造を持っています。前者は判断の標準化で、後者は過去調査の再利用で対処できます。

AIエージェントが変える調査業務

公開情報の収集・整理を自動化する

AIエージェントは、「調査の完全代替」ではなく、公開情報を横断して収集・整理し、人間の判断を支援する仕組みとして活用できます。複数の情報源を横断した情報収集、定型項目の抽出、レポートの下書き作成といった工程を自動化することで、調査担当者は情報収集ではなく「判断」に時間を使いやすくなります。

AIエージェントを活用した調査自動化は、人間による情報源と優先順位の設計を起点に、定型項目の抽出、レポートの下書き作成へと進めます。企業の公式サイト、業界ニュース、統計データベースなどから、指定された項目を抽出し、構造化されたレポートを生成します。

実際の導入事例では、工数削減の効果が確認されています。デロイト トーマツは、内部監査・J-SOX評価アプリケーションのAIエージェント機能を適用した対象案件20件を検証し、証憑の評価実施・調書作成における業務工数を50%以上削減したと公表しています[1]。この事例は調査業務そのものではありませんが、業務の構造を分解すると共通点が見えてきます。

内部監査における証憑収集・評価と、調査業務における情報収集・分析は、次の3つのステップで構成されています。

  1. 情報源の特定:どこに必要な情報があるか
  2. 情報の抽出:各情報源から必要な項目を取得する
  3. 情報の評価:取得した情報の信頼性や適切性を判断する

情報源の巡回や定型項目の抽出は、AIエージェントが担いやすい工程です。評価についても、過去の基準との照合、差分の抽出、判断根拠の整理まではAIが支援できます。一方で、自社戦略への影響や例外時の対応、最終的な採否判断は、人間が責任を持つ設計が必要です。

調査業務でも同様の構造があります。情報源の特定や項目抽出は自動化しやすい一方、「この新製品は自社にとって脅威か、機会か」といった戦略的評価は、人間が担う必要があります。

過去の調査結果を検索・再利用する

AIエージェントのもう一つの強みは、過去の調査結果を検索し、新しい調査に活用できることです。社内の調査レポートをAIが参照できる形で整理しておけば、過去の類似調査を瞬時に確認できます。

AIエージェントを導入する際の重要なポイントは、「業務をAI前提で再設計する」ことです。これは、AIエージェントを前提に業務プロセスを再設計する「Agentic BPR」という考え方にも通じます[2]。AIに情報の収集・整理を任せ、人間が信頼性評価と戦略的解釈を担うという役割分担を明確にする設計が必要です。

実践ステップと人間が担う役割

調査テーマの設定と情報源の設計

AIエージェントによる調査自動化の第一歩は、調査テーマの設定です。「競合A社の新製品情報」「XX業界の市場規模」といった調査の目的を明確にし、参照すべき情報源を指定します。この段階では、人間が調査目的・対象範囲・優先情報源を定義し、AIエージェントがその条件に沿って情報収集と整理を支援する役割分担が有効です。

調査の目的、範囲、求められる精度を明確に定義します。例えば競合調査なら「A社の新製品発表を四半期ごとに追跡し、価格帯と機能を比較する」といった具体的な指示が必要です。

信頼できる情報源をリスト化し、AIに参照させます。企業の公式発表、官公庁・規制当局の公表資料、官公庁等が公開する統計などの一次情報を優先し、業界ニュースや民間の調査レポートは補足情報として扱う設計が適切です。ただし、有料データベースや社内資料などは、契約条件、認証方式、外部システムとの連携可否によってAIが参照できる範囲が異なります。連携していない情報源や、アクセス権が付与されていない情報は、人間が補完する運用が必要です。

人間による最終判断と解釈

AIエージェントが収集した情報は「素材」です。その情報をどう解釈し、意思決定につなげるかは人間が担います。例えば、競合調査でAIが「A社が新製品Xを発表した」と収集しても、それが脅威か機会か、どう対応すべきかは人間が判断します。調査業務の自動化は、人間の判断を不要にするのではなく、判断に集中できる時間を増やすことが目的です。

導入時の注意点とリスク

AIエージェントによる調査自動化には、いくつかの注意点があります。

第一に、基盤モデル単体では学習時点以降の情報を参照できないという制約があります。一方、Web検索や外部データ連携を組み合わせたAIエージェントであれば、公開情報の最新動向を調査対象に含められます。ただし、有料データベース、会員制サイト、社内限定資料などは、契約条件や認証・連携方式によって参照範囲が異なります。導入前に「どの情報源を、どの権限で、どこまで扱うか」を確認する必要があります。

第二に、AIが収集した情報の正確性を検証する仕組みが必要です。AIは指定された情報源から情報を抽出しますが、抽出の過程で誤読や文脈の誤解が生じる可能性があります。特に数値データや法規制の条文など、精度が求められる情報については、人間による検証プロセスを組み込むべきです。

第三に、属人化が「移転」する可能性があります。AIエージェントの設定(どの情報源を信頼するか、どの項目を抽出するか)が特定の担当者に依存すると、別の形で属人化が残ります。AIの設定内容をドキュメント化し、チーム内で共有する仕組みが必要です。

調査業務の標準化にSmart Generative Chatを活用する

業務フローの標準化とAI活用基盤

調査業務の属人化を減らすには、「どの情報源を参照し、何を抽出し、誰が確認するか」を業務フローとして標準化することが重要です。Smart Generative Chatでは、社内に蓄積された過去の調査レポートや規程を参照するナレッジ検索を活用できます。さらに、Web検索や外部システム連携を組み合わせて業務フローを構築することも可能です。なお、Web検索機能の利用条件や対象範囲については、導入時に確認が必要です。

複数の公開情報を横断して調査・分析し、レポートとして整理したい業務では、Deep Research Agent機能の活用も選択肢になります。

小規模PoCから始める

まずは「競合各社の新製品発表を月次で収集する」など、対象範囲と成果物が明確な業務から始め、収集精度・レビュー時間を測定しながら適用範囲を広げるとよいでしょう。PoCでは、調査時間だけでなく、対象情報源の網羅率、人間レビューでの修正率、レポート作成時間、過去レポートの再利用件数も測定すると、導入効果を判断しやすくなります。

調査業務の標準化や、社内ナレッジと公開Web情報を組み合わせたAI活用をご検討の方は、Smart Generative Chatの機能や無料トライアルをご覧ください。

さいごに

調査業務の属人化は、情報の探し方ではなく、信頼性判断に専門性が集約されることで生まれています。AIエージェントは「公開情報の収集・整理の自動化」という解決策を提供しますが、導入すれば自動的に属人化が削減されるわけではありません。

内部監査・J-SOX評価では、証憑の確認や調書作成といった定型性の高い工程にAIエージェントを適用し、50%以上の工数削減が報告されています[1]。調査業務でも、情報源の巡回、定型項目の抽出、レポートの下書き作成など、ルール化できる工程では効率化が期待できます。ただし、削減効果は調査テーマ、情報源の品質、レビュー体制によって異なるため、まずは小規模なPoCで測定することが重要です。

効果を実現するには、業務をAI前提で再設計することが不可欠です。どこをAIに任せ、どこで人間が判断するかを明確に定義し、業務フローを見直すことで、属人化の削減と生産性向上を両立できます。

出典

この記事を書いた人

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m-koshihara

ソリューションサービス事業部

5年以上Webアプリ開発に従事したのち、2023年よりSGCの導入を担当。法人向け生成AI活用について、導入や業務活用の視点から発信しています。

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