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NVIDIA×OpenAI、1000億ドル投資計画が数百億ドルに縮小か – 交渉の現状と今後の展望

2026年1月末、AI業界を揺るがすニュースが報じられました。半導体大手NVIDIAと生成AI企業OpenAIが2025年9月に発表した最大1000億ドル規模の戦略的提携が事実上「保留」され、投資額が大幅に縮小される見通しとなったのです。この動きは単なる投資規模の調整ではなく、AI産業全体が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。本記事では、両社の交渉が停滞した真の理由と、AI業界を覆う「循環金融」というリスクについて解説します。

1000億ドル投資計画の破綻が意味するもの

契約凍結の経緯と両社の反応

2025年9月、NVIDIAとOpenAIは10ギガワット規模のデータセンター構築に向けた意向表明書に署名し、世界を驚かせました。計画では、NVIDIAが最大1000億ドルを段階的に投資し、OpenAIがその資金でNVIDIA製チップをリースする仕組みでした[1]。しかし、2026年1月30日に複数メディアが報じたところによれば、NVIDIA内部から取引への懸念が示され、交渉が停滞しているといいます[2]。

Jensen Huang CEOは台北での記者会見で「OpenAIの資金調達ラウンドには必ず参加する」と述べつつも、投資額については「1000億ドルのような規模では全くない」と明言しました[3]。一方、OpenAI側も「両社は提携の詳細について積極的に協議中」とコメントし、関係継続の意思を示しています。投資額は数百億ドル規模に縮小される可能性が高く、当初の壮大な計画からは大きく後退した形です。

注目すべきは、NVIDIAの2025年第3四半期財務報告書に記載された慎重な文言です。同社は「OpenAI投資に関する確定的な契約が締結される保証はなく、予想される条件で投資が完了する保証もない」と明記していました[4]。この記述は、当初から契約の実現可能性に疑問があったことを示唆しています。

循環金融への市場の警戒

投資縮小の理由は、OpenAIの経営不安や競合の台頭だけではありません。「循環金融」と呼ばれる構造的問題も懸念されています。循環金融とは、企業が顧客に投資し、その顧客が投資資金を使って投資元企業の製品を購入する仕組みを指します。

NewStreet Researchの試算によれば、NVIDIAが100億ドルをOpenAIに投資すると、OpenAIは350億ドル相当のNVIDIA製GPUを購入することになります[5]。つまり、NVIDIAは自社の売上を自ら創出しているに等しく、これは本質的な需要を反映していない可能性があるのです。

Bernstein ResearchのアナリストStacy Rasgonは、契約発表時点で「この動きは明らかに『循環』への懸念を煽る」と警告していました[6]。実際、Wedbush AnalystのDan Ivesも「Huangによる投資縮小表明は、循環金融への懸念を払拭しようとする動き」と分析しています[7]。市場は、表面的な売上成長の裏に隠れた真の需要を見極めようとしているのです。

AI業界を覆う構造的リスク

ドットコムバブルとの類似性

循環金融が危険視される理由は、2000年代初頭のドットコムバブル崩壊時に同様の仕組みが業界を破滅させた歴史があるためです。当時、Cisco、Lucent、Nortelといった通信機器メーカーは、インターネットスタートアップに巨額の融資を行い、そのスタートアップが融資資金で機器を購入しました[8]。表面的には華々しい売上成長に見えましたが、実際は企業が自らの製品を自己資金で購入していたに過ぎず、バブル崩壊とともに業界は壊滅したのです。

現在のAI業界も同様のパターンを示しています。NVIDIAは2024年に約10億ドルをAIスタートアップに投資し、これは2022年から大幅に増加しています[9]。こうした投資先の多くがNVIDIA製チップを購入しており、需要の持続可能性に疑問符がつきます。Morgan StanleyのCIO Lisa Shalettは、ハイパースケーラー(大手クラウド企業)のフリーキャッシュフロー成長率が既にマイナスに転じており、今後12ヶ月で16%縮小すると予測しています[10]。

ただし、UBS Globalの分析によれば、現在の状況はドットコムバブル時とは異なる側面もあります。主要テック企業は強固なオペレーティングキャッシュフローを持ち、「ビッグ4」は2025年に合計2030億ドルのフリーキャッシュフローを生み出すと予測されています[11]。過去のバブルほど脆弱ではないものの、警戒は必要です。

相互依存が生むカスケードリスク

さらに深刻なのは、循環金融がOpenAI単独に留まらず、AI業界全体に張り巡らされたネットワークである点です。NVIDIAはAIクラウドプロバイダーCoreWeaveに7%の株式を保有し、OpenAIはCoreWeaveと最大224億ドルのクラウド契約を結び、NVIDIAは2032年までCoreWeaveの余剰クラウド容量を購入すると約束しています[12]。

AMDもOpenAIに最大1億6000万株のワラント(新株予約権)を付与し、OpenAIは60億ワット分のAMD製GPUを購入する契約を結びました[13]。Oracle、SoftBank、Microsoftなども同様の相互依存関係にあり、一社の財務悪化が連鎖的に他社に波及するカスケードリスクが存在します。

UBS Globalの試算では、OpenAI-NVIDIA契約はNVIDIAの2026年予想収益の約13%を占めます[14]。この規模は無視できないものの、圧倒的というほどでもありません。しかし、複数の循環金融が絡み合うことで、個別の取引以上のシステミックリスクが生じる可能性があるのです。

さいごに

1000億ドルから数百億ドルへの投資縮小は、NVIDIAがAI産業の持続可能性について根本的な疑問を抱き始めたことの表れです。インフラ提供という循環金融モデルから、純粋な株式投資という通常の投資モデルへの転換は、AI業界が「実験の時代」から「収益の時代」へと移行する転換点を象徴しています。

無制限の資金供給によってAIモデルを巨大化させる手法は、その限界を迎えつつあります。今後のAI投資は、より厳格な財務規律と、明確な投資収益率を求められる時代に入りました。ビジネスパーソンとしては、AI関連企業への投資や取引において、表面的な成長数値だけでなく、その裏にある資金の流れや真の需要を見極める視点が不可欠です。循環金融のリスクを理解し、持続可能なビジネスモデルを持つ企業を見分ける力が、今後ますます重要になるでしょう。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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