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2026年、医療AIは実用フェーズへ|市場規模と主要トレンドを整理

年率40%超の急成長が見込まれる医療AI市場。しかし日本国内では、AI搭載医療機器を導入している医療機関はわずか28%にとどまっています[1]。導入しない理由の半数以上が「費用対効果がわからない」と回答する現状は、華々しい市場予測とは対照的です[2]。ただし、2024年度の診療報酬改定を契機に、この状況は大きく変わろうとしています。本記事では、医療AI市場の最新動向と、2026年に向けた実用化の本質を読み解きます。

医療AI市場の現状と2026年への展望

グローバル市場の急成長と日本の立ち位置

世界の医療AI市場は、2024年の290億ドルから2032年には5041億ドルへと急拡大する見通しです。これは年平均成長率(CAGR)44.0%という驚異的なペースであり、北米が市場の約半分を占めています[3]。用途別では、ロボット支援手術が最大のシェアを占め、慢性疾患の増加と低侵襲手術への需要拡大が成長を牽引しています[3]。

一方、日本市場は2021年の2億6500万ドルから2030年には18億7000万ドルへ、年率21.7%の成長が予測されています[4]。グローバル市場と比べると成長率はやや穏やかですが、これは日本独自の医療システムや厳格な薬事承認プロセスが影響していると考えられます。しかし、国民皆保険制度のもとで蓄積された豊富な診療データは、AI開発における日本の強みでもあります[4]。

政府も医療AIの推進に本腰を入れています。2025年6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2025」では、AI開発と医療・健康が重点戦略分野として位置づけられました[1]。また、PMDAは2024年7月に「プログラム医療機器審査室」を「プログラム医療機器審査部」へ組織改編し、審査体制を2チームに拡充しています[5]。

導入率28%が示す「費用対効果」の壁

日経リサーチの調査によれば、2025年5月時点でAI搭載医療機器を導入している医療機関は全体の28%に過ぎません[1]。導入が進んでいるのは画像診断支援で13.3%、ゲノム医療で約9.7%、診断・治療支援で9.1%という状況です[2]。さらに、病院規模による格差も顕著で、大学病院では約24%(ゲノム/AI画像などでの導入)が導入済みである一方、地域の診療所では94.3%が未導入という調査結果もあります[6]。

導入しない理由として最も多いのが「費用対効果がわからない」で51%、次いで「費用対効果が良くない」が24%でした[2]。AI医療機器の初期投資は数千万円規模に及び、年間の運用コストも数百万円から1000万円単位となるケースが少なくありません。診療報酬上の明確なメリットが見えない中での投資判断は、医療機関にとって極めて困難だったのです[7]。

また「AI利用に不安がある」という回答も23%あり、運用に必要な知識習得やスタッフのトレーニングに対する懸念も浮き彫りになっています[2]。技術的な精度の高さだけでは、医療現場での実用化は進まないことが明確に示されています。

診療報酬改定が変えた医療AIの価値

「管理できる医療機器」としての新評価軸

2024年6月施行の診療報酬改定は、医療AI実用化における大きな転換点となりました。新設された画像診断管理加算3の施設基準には「関係学会の定める指針に基づいて、人工知能関連技術が活用された画像診断補助ソフトウェアの適切な安全管理を行っていること」が明記されました[8][9]。これは国が初めて、AIを「管理すべき医療機器」として正式に位置づけた瞬間です。

さらに重要な変化として、大腸内視鏡検査におけるAI病変検出支援プログラムに保険点数加算が新設されました[10]。これまでAI医療機器の多くは包括点数に含まれ、医療機関にとっては「持ち出し」でしかありませんでした。しかし、AIを使うこと自体に経済的価値が認められたことで、投資回収の見通しが立てやすくなったのです。

日本医学放射線学会は「画像診断管理認証制度」を通じて、AI安全精度管理の認証を開始しています[11]。認証を受けた医療機関は診療報酬上の優遇を受けやすくなり、認証の有無が医療機関の差別化要因となりつつあります。医療AIの評価軸は「技術の精度」から「運用の確実性」へとシフトしているのです。

2026年改定で加速する実用化

診療報酬は原則2年周期で改定されるため、次回は2026年6月となります[12]。2024年改定でAIの「管理」が評価されたことを踏まえれば、2026年改定ではこの流れがさらに強化される可能性が高いでしょう。医療技術の評価では、AIを活用した大腸内視鏡検査の画像診断支援システムやロボット支援手術などが対象となっており[12]、新たな加算措置や評価指標の新設が検討される見込みです。

薬事承認プロセスも加速しています。2023年11月に発出された「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認」の通知により、最終的な臨床的意義が確立されていない段階でも第1段階承認を取得できるようになりました[13]。市販後に臨床的エビデンスを蓄積しながら第2段階へ進む仕組みにより、実用化までの期間が大幅に短縮される見込みです。

矢野経済研究所の予測では、診断・診療支援AIシステムの国内市場規模は2028年度に264億円に達するとされています[14]。2024年度の診療報酬改定で画像診断管理加算3及び4が新設され、大腸癌・ポリープ等の病変をAIの支援により検出した場合の保険点数も付与されることとなったため、市場は普及期にシフトしています[14]。

さいごに

医療AIの実用化とは、単に技術が優れていることではなく、医療現場で「標準的に」使われる状態になることを意味します。そのためには薬事承認、診療報酬、品質管理、人材育成といったすべてのインフラが整う必要があります。2024年度の診療報酬改定でAIの「管理」が評価され始めたことは、この最後のピースが埋まり始めたことを示しています。

2026年6月の次期改定では、この動きがさらに強化され、AI導入が医療機関にとって「当たり前の選択肢」になる可能性が高いでしょう。市場規模の予測数字だけを見ていては、この本質は見えません。医療AIの実用化は、技術革新の物語ではなく、医療制度と経済インセンティブの物語なのです。貴施設でも、2026年を見据えた導入検討を始める好機といえるでしょう。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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