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2026年8月にEU AI法施行開始!日本企業が今すぐ始めるべきAIガバナンス対策

2026年8月2日、世界のAI規制における歴史的な転換点が訪れます。欧州連合(EU)が制定した「AI規制法(AI Act)」の大部分が適用開始となり、世界で初めて包括的なAI規制体制が本格稼働するのです[1]。韓国でも2026年1月22日に「AI基本法」が施行され[2]、日本でも2025年6月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI新法)」が成立しました[3]。

しかし、多くの日本企業はこれらの法規制を「対応しなければならないコスト」として捉えています。実はこれは大きな誤解です。AIガバナンス体制の構築は「国際標準への先行投資」であり、GDPR対応時と同様のグローバル連鎖が予測される今、早期に対応した企業こそが競争優位を獲得できるのです。

なぜ今、AIガバナンスが重要なのか

GDPR対応の教訓が示す規制連鎖の現実

2018年5月に施行されたEUの一般データ保護規則(GDPR)は、当初「EU域内の規制」と軽視されていました。しかし現実には、GDPRはグローバルなデータプライバシー規制のデファクトスタンダードとなり、各国の法整備に影響を与えました[4]。日本でも2021年にGDPRの内容を踏まえ個人情報保護法が改正され、米国でも連邦レベルのプライバシー法案が検討されています[5]。

AI規制も同じ道を辿る可能性は高いです。EU AI法は域外適用条項を持ち、EU域内で商品・サービスを提供する企業や、EU市場に影響を与えるAIシステムには適用されます[6]。例えば禁止行為の違反については最大3500万ユーロまたは全世界売上高の7%という巨額の罰金が科されるため、企業は深刻な財務リスクに直面します[7]。この罰則規模はGDPRよりも大きく、EUがAI規制を重視する姿勢が明確に示されています。

グローバルサプライチェーンからの要求圧力

重要なのは、法的義務がない段階でも、取引先企業やグローバルサプライチェーンからの要求により事実上の対応が必要になる点です。欧州の親会社やグループ企業から「AI開発プロセスの透明性」「提供するAI機能に対する適合性証明」を要求される事例が増加しています[8]。GDPR対応時も、直接的な適用対象でない日本企業が欧州企業との取引継続のために対応を迫られました。AI規制でも同様の連鎖が起きるでしょう。

特に、採用選考、融資審査、医療診断などを扱う企業にとって、EU AI法の高リスクAIシステムに該当する可能性があり、リスク管理システム、データガバナンス、透明性の確保といった厳格な義務が課されることになります[1]。これらの要件を満たさなければ、EU市場から事実上排除される可能性があるのです。

日本企業の現状と課題

形式的な対応に留まる日本企業の実態

EYが2025年8月から9月にかけて実施した調査によれば、グローバル企業の回答企業は10項目のAIガバナンス施策のうち平均7項目をすでに実施済みです[9]。この調査には日本企業50社も含まれており、グローバル全体の傾向と同様の結果が見られました。しかし、日本企業では「ガバナンスやポリシー策定は進んでいるものの、具体的な施策実装や教育には相対的に改善余地がある」という傾向が指摘されています[9]。

総務省の調査でも、日本企業で生成AIの活用方針を「積極的に活用する方針」または「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている割合は49.7%に留まり、米国や中国と比較すると低い状況です[10]。さらに深刻なのは、リスク対応の具体性です。米国では「プロンプトインジェクションの監視」「有害コンテンツの検出」など具体的な対策を導入している割合が高く、リスク対応について生成AIの出力正常化・安定化を実施していない割合は米国が3%に対して日本では20%にのぼります[11]。形式的なガイドライン策定に留まり、実効性のある運用体制が整っていない企業が多いのが現実です。

中小企業との格差拡大という構造的問題

日本国内の状況を企業規模別に見ると、中小企業では特に「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占めており、大企業と比較して生成AIの活用方針の決定が立ち遅れています[10]。2025年の調査によれば、生成AIを導入済みの日本企業は約4社に1社にとどまり、「導入を検討中」と回答した企業は46.2%にのぼる一方、「導入予定はない」と明言した企業も46.2%存在します[12]。

野村総合研究所の調査では、70.3%の企業が生成AI活用に関わる課題として「リテラシーやスキルが不足している」と回答しており、2024年度から増加傾向にあります[13]。生成AIの導入が進んだ結果、実際に業務で活用するためには一定のリテラシーやスキルが必要であると認識した企業が増えたことが背景にあります。この人材育成の遅れが、国際競争力の低下につながる恐れがあります。

競争優位を築くための具体的アクション

ISO/IEC 42001認証で信頼性を証明する

AIガバナンスの実効性を証明する国際標準として注目されているのが「ISO/IEC 42001」です[14]。これは世界初のAIマネジメントシステム(AIMS)認証規格であり、AIシステムの責任ある開発・運用体制を第三者が検証する枠組みです。Microsoftは、一部のAIサービスを対象としてISO/IEC 42001認証を取得したことを公表しています。一方、AWSおよびGoogleも、ISO/IEC 42001への準拠や認証取得に向けた体制整備・対応方針を公開しており、主要クラウド事業者が同規格を重要な信頼指標として位置づけていることが分かります[15]。

EYの調査によれば、AIリアルタイム監視システムを導入している企業は、収益成長を達成する可能性が34%高く、コスト削減の可能性も65%高いことが明らかになっています[9]。また、調査対象となった企業のほぼすべて(99%)が、AI関連のリスクによって財務的損失を経験しており、そのうちの約3分の2(64%)は100万米ドルを超える損失を被っています。平均損失額は控えめに見積もっても440万米ドルに上ります[9]。

日本企業にとって、ISO/IEC 42001認証の取得は単なる「お墨付き」ではなく、グローバル市場での信頼性を担保し、EU AI法をはじめとする各国規制への適合性を示す戦略的ツールなのです。実際、欧州企業との取引において、ISO/IEC 42001認証が取引条件として求められるケースが増えつつあります。

実効性のあるガバナンス体制を構築する

形式的なポリシー策定に留まらず、リスク評価・モニタリングを実際のAIプロジェクトごとに実施し、結果を現場にフィードバックする仕組みを運用手順として定着させることが重要です[16]。バイアス検証やデータ品質チェックを開発工程や運用プロセスに具体的なタスクとして組み込む必要があります。

PwCの調査では、高い効果を上げている企業はいずれの国でも、生成AIを単なる効率化ツールではなく、業務や事業構造の抜本改革の手段と捉え、業務プロセスへの本格的な組み込み、ガバナンス体制の整備、従業員への価値還元に取り組んでいます[17]。日本では、このような先進的な取り組みを実現する企業の割合が少なく、それが全体としての成果の差となって表れています。経営層のリーダーシップと挑戦を後押しする環境づくり、そして変革を支える組織的マインドの醸成が不可欠です。

また、経営層から現場担当者まで、AIリスクに対する認識を共有し、ガバナンスが形骸化しない文化づくりが求められます。AI開発者向けにリスク管理や法律知識を兼ね備えた人材育成を推進し、勉強会や社内セミナーでAIのリスクとガバナンスの事例を紹介するなど、継続的な教育・情報発信を行うことが重要です[16]。

さいごに

2026年8月のEU AI法全面施行は、世界のAI規制における転換点です。韓国AI基本法の施行、日本のAI新法成立と合わせて、AIガバナンスはもはや「やるべきこと」ではなく「やらなければ生き残れないこと」になりました。

しかし、これを単なる「規制対応コスト」と捉えるのは近視眼的です。GDPR対応時と同様、規制は連鎖し、グローバルスタンダードとなります。早期に対応した企業は国際標準に適合した信頼性の高いAIシステムを武器に、グローバル市場で優位に立てます。逆に後手に回った企業は、取引機会の喪失や巨額の罰金リスクに直面するだけでなく、EYの調査が示すように平均440万米ドルもの損失を被る可能性があるのです。

AIガバナンスは「規制の先行投資」であり、同時に「競争優位の源泉」です。今すぐ始めることが、2026年以降の競争を制する鍵となります。ISO/IEC 42001認証の取得を視野に入れ、実効性のあるガバナンス体制を構築し、組織全体のリテラシー向上に取り組む。これらの施策を今日から始めることで、グローバル市場における信頼性と競争力を確保できるのです。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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