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『AI導入で○○円削減』を証明する|ROI計測の5ステップと説得力ある報告書の書き方

AI導入の投資対効果を証明しようとして、失敗していませんか。実は、企業の95%がAI導入の利益インパクトを測定できていないという衝撃的なデータがあります[1]。

しかし、問題はAI技術そのものではありません。多くの企業が「間違ったもの」を測定しようとしているのです。本記事では、ROI証明に成功している企業が実践する測定手法と、経営層を説得できる報告書の書き方を解説します。

なぜ95%のAI導入プロジェクトがROIを証明できないのか

「技術のROI」を測ろうとする根本的な誤り

2025年7月に発表されたMITの調査によると、300件のAI導入プロジェクトのうち95%が測定可能な利益インパクトを示せていません[1]。この失敗の最大の原因は、企業が「AI技術そのもの」のROIを測定しようとしていることにあります。

McKinseyが25の組織属性を分析した結果、AI収益性に最も影響を与える要因は、データ品質でもモデルの精度でもなく「ワークフローの再設計」でした[2]。さらにAccentureの調査では、AI導入で得られる価値の70%は、技術そのものではなく、能力開発やトレーニング、変革管理から生まれることが明らかになっています[3]。つまり、AI単体のROIは存在せず、測定すべきは「AIを活用したビジネスプロセス変革のROI」なのです。

興味深いことに、2025年のMETR研究では、16名の経験豊富な開発者を対象にした実験で、AIツールが作業時間を19%増加させたという結果が出ています[4]。開発者自身は20%の時間短縮を実感していたにもかかわらず、です。この事例は、個人の生産性向上が組織全体の成果に直結しないことを示しています。

日本企業が直面する「PoC死」の本質

日本企業の状況はさらに深刻です。PwC Japanの調査によると、日本企業でAIのROIを正確に測定できているのはわずか21%で、米国企業の64%と大きな差があります[5]。また、AI導入済み日本企業の約半数以上が効果測定を全く実施していません。

この測定不足は、一見すると怠慢に見えます。しかし、実態は異なります。多くの日本企業が経験する「PoC死」(技術的には成功したパイロットプロジェクトが本番展開されない現象)は、測定フレームワークの不適合が原因です。TISの調査では、本格展開に至るプロジェクトはわずか21.9%です。企業は「AI技術が動作すること」は証明できても、「AI単体の財務的価値」という証明不可能な要求に応えられないのです。

RANDコーポレーションの研究では、AIプロジェクトの失敗率は80%で、従来のITプロジェクトの2倍に達しています[6]。主要な失敗原因は「実際の問題解決ではなく技術に焦点を当てること」です。これは世界共通の課題ですが、日本企業の場合、厳密な効果測定文化と相まって、証明不可能な目標設定が問題を深刻化させています。

ROI証明に成功する企業が実践する5つのステップ

ステップ1-3:プロセス変革を起点にした測定設計

成功企業のアプローチは、技術中心ではなくプロセス中心です。JPMorgan ChaseのCEOは2025年10月、「20億ドルの投資に対して約20億ドルの効果を得た」と発表しました[7]。一見控えめな損益分岐点ですが、その測定手法は洗練されています。

ステップ1:変革対象のビジネスプロセスを特定する JPMorgan Chaseは、法務文書処理で年間36万時間の削減、マネーロンダリング対策での誤検知95%削減など、具体的なプロセス成果を測定しました[8]。日本企業でも、NECソリューションイノベータがAIチャットボットによるコールセンター人員削減で年間4億7000万円のコスト削減、三菱UFJ銀行が月間22万時間以上の労働時間削減を達成しています。

ステップ2:プロセス変革の全体像を設計する Deloitteの分析によると、高いAI ROIを達成している組織の85%は、生成AIとエージェント型AIで異なる測定フレームワークを使用しています[9]。技術を既定の財務カテゴリーに無理やり当てはめるのではなく、ユースケースに応じて測定方法を調整しています。ここでAIは、トレーニング、変革管理、ワークフロー再設計、ガバナンスとともに、ビジネス成果を生み出す複数の要素の一つとして位置づけられます。

ステップ3:測定可能なビジネス成果指標を設定する BCGの研究では、AI導入で成功している企業は「アルゴリズムや技術よりも、人とプロセスに注力している」と報告されています[10]。測定すべきは「AI導入により変革されたプロセスが生み出すビジネス成果」であり、AI技術への投資額対効果ではありません。この視点の転換が、説得力あるROI証明の土台となります。

ステップ4-5:説得力ある報告書の作成手法

ステップ4:フレームの再定義を明示する 報告書では、測定対象を明確に再定義することが重要です。「AI導入で○○円削減」ではなく「AIを活用したプロセス変革により○○円削減」と表現することで、測定の正確性が高まります。これは言葉の言い換えではなく、測定対象の科学的な再定義です。

例えるならAI ROIの測定は、1998年にインターネットのROIを測定するようなものです。インターネットの価値は、それが可能にしたビジネスモデルから切り離せません。AIも同様です。報告書では、この認識論的な前提を経営層と共有することが、説得力の基盤となります。

ステップ5:内製化と外部調達の違いを理解する MITの研究では、内製AI開発が外部ベンダーソリューション購入の2倍の確率で失敗することが判明しています[12]。外部ソリューションは、ワークフロー再設計が組み込まれていることが多いためです。報告書では、AI導入方針(内製か購入か)と期待されるROIの関係性を明示し、現実的な目標設定を行うことが重要です。

これら5つのステップを通じて、「証明不可能なものを証明しようとする」誤りから脱却できます。McKinsey、BCG、Deloitte、MITなどの研究が収束する結論は明確です。AI単体のROIは独立した量として存在せず、存在するのはビジネス変革のROIであり、AIはその実現要素の一つなのです[13]。

さいごに

AI導入の95%が失敗する理由は、技術の不備ではなく、測定フレームワークの不備にあります[1]。企業が求めているもの(AI単体のROI証明)は、その定義上、証明不可能なのです。

日本企業がAI投資判断を行う際、このフレームの転換は解放と責任の両方をもたらします。解放とは、証明不可能なものを証明する必要がないということ。責任とは、変革が達成するビジネス成果を測定しなければならないということです。説得力のあるROI報告書を作成できる企業は、優れたAI技術や精緻な帰属モデルを持つ企業ではありません。自分たちがプロセス変革を測定しているという事実を認識し、それに応じた報告書を構築できる企業なのです。

「AI導入で○○円削減を証明する」道は、技術会計を通じてではなく、ビジネスプロセス改善という古典的な規律を通じて開かれます。AIは、組織が常に行ってきた活動、すなわち仕事のやり方の再設計を促す、最新かつ最も強力な触媒に過ぎません。測定フレームワークは、この現実を反映すべきです。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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