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日本のAI利用率はなぜ26.7%と低いのか?|『必要ない・わからない』が示す7つの深刻な課題

日本におけるAI利用率はわずか26.7%──この数字は、米国の68.8%や中国の81.2%と比べて著しく低い水準です[1]。企業に目を向けても、生成AIを活用する企業は約49.7%にとどまり、中小企業ではわずか34.3%に過ぎません[2]。さらに、AIを使わない理由として「必要ない」と回答した人が約4割にのぼることも明らかになっています。これらの数値は、日本社会におけるAI活用が個人・企業の双方で十分に進んでいない現状を端的に示しています。

この「必要ない」「わからない」という声の背景には、日本固有の構造的・心理的・制度的な課題が複雑に絡み合っています。単なる技術理解の問題にとどまらず、組織文化や教育、制度設計の在り方まで含めて考える必要があります。本記事では、日本のAI後進国化を招いている7つの要因を掘り下げ、それぞれがどのように連鎖して現在の状況を生み出しているのかを整理していきます。

AIの効果への認知不足

成功事例が届いていない現実

AIによるメリットへの認知が低いことは、日本の利用率低迷の根本的な要因の一つです。「AIは必要ない」と回答した人が約4割に達しているという事実は、AI活用による生産性向上や業務効率化の効果が、個人レベルでも企業レベルでも十分に共有されていないことを示唆しています[1]。

実際、多くの人は現状の業務や生活に致命的な不便を感じておらず、AIを導入することで何がどれだけ改善されるのかを具体的に想像できていません。成功事例が限定的な範囲にとどまり、定量的な成果や失敗から得られた学びが社会全体に伝播していないことが、「必要ない」という認識を強化していると考えられます。

「何ができるか」のイメージ不足

日本では生成AIの利用用途として「調べもの・検索的利用」が比較的多く、米国では文章要約・翻訳、画像生成、業務自動化など、より多様な用途で使われていることが示されています[1]。これは単なる使い方の違いではなく、AIを道具として捉える発想の差を反映しています。「AIで何ができるのか」という具体的なイメージを持てなければ、導入コストや学習コストに見合う価値を感じられず、「必要ない」という結論に至るのは自然な結果といえるでしょう。

デジタルリテラシー・スキル不足

教育・研修体制の遅れ

「使い方がわからない」という声の背景には、AIに関する教育や人材育成の遅れがあります。企業調査でも、AI活用の課題として「AIリテラシーやスキルの不足」を挙げる声が多いことが報告されています[4]。学校教育においても、生成AIの活用方法を体系的に教える仕組みはまだ発展途上であり、現場ではリスク回避を優先した慎重な対応や使用制限が先行してきました。その結果、社会全体としてAIに触れる機会が限られ、「難しそう」「自分には関係ない」という心理的距離が拡大しています。

深刻化する人材不足

企業においても、社内研修や実践的トレーニングが十分とは言えず、AI導入を主導できる人材の不足が顕在化しています。経済産業省の推計では、2030年に向けて日本ではIT人材全体で大幅な不足が生じる可能性が示されており、その中にはAI・データ活用を担う人材も含まれます[5]。この人材不足は個人の問題にとどまらず、組織として新技術を試し、改善し、定着させる力を弱める構造的な課題となっています。

リスク回避志向の強さ

完璧主義がもたらす停滞

新技術に対する慎重な姿勢も、日本でAI活用が進みにくい一因です。生成AIに対しては、情報漏えいや著作権侵害、誤情報の拡散といったリスクを懸念する声が企業内で多く聞かれます[4]。もちろんリスク管理は不可欠ですが、リスクを理由に試行すら行われない状況では、実運用に耐えるルールやガバナンスを整備することもできません。

不確実性への過度な警戒

生成AIは誤回答や不適切な出力を行う可能性があります。その不確実性を過度に嫌い、「完璧でないなら使わない」という判断に傾きがちなのも、日本的な特徴といえるでしょう。一方で海外では、小さく試し、問題があれば修正するという段階的導入が一般的であり、この姿勢の違いが普及スピードの差として表れています。

集団調和と「空気」の支配

同調圧力が生む悪循環

日本の職場では、明文化されない「空気」や同調圧力が行動を制約するケースが少なくありません。企業現場からも、「経営層が明確に方針を示さない限り、社員が自発的に生成AIを使いづらい」という声が紹介されています[3]。その結果、個人レベルでは関心があっても、組織としては動けない状態が固定化されてしまいます。

暗黙のタブーが阻む挑戦

生成AIの利用が公然と推奨されず、非公式な「裏技」のように扱われる職場文化では、活用が広がるはずもありません。「みんなが使っていないから自分も使わない」という同調の連鎖が、普及をさらに遅らせています。

制度・ガイドラインの不備

縦割り行政による連携不足

教育や企業利用に関する生成AIのガイドラインは分野ごとに整備が進められているものの、現場では分かりにくさが残っています。その結果、学校や企業が自主判断で慎重な対応を取らざるを得ず、「一律禁止」や「様子見」に傾きやすい状況が生まれています[3]。

統一的な国家戦略の見えにくさ

AI政策は複数の省庁が関与していますが、現場目線では統一的な方向性が見えにくいという指摘もあります[3]。明確な道筋が示されない中で、現場が安全策として足踏みしてしまう構造が続いています。

言語・ローカライズの壁

英語圏優位がもたらす心理的ハードル

生成AIは英語圏のデータを中心に発展してきた背景があり、日本語での活用に心理的なハードルを感じる人も少なくありません。「魅力的なサービスがない」という理由が利用しない理由として挙げられている点も、この文脈で理解できます[1]。

日本語対応サービスの発展途上

日本語対応の生成AIサービスは着実に増えているものの、活用事例や認知の面ではまだ発展途上といえます。身近で使いやすいサービスが十分に知られていないことも、利用率低迷の一因でしょう。

レガシーシステムと戦略欠如

古いシステム基盤という足かせ

多くの日本企業は、レガシーシステムや紙中心の業務フローを抱えており、データが分断された状態にあります[4]。この状況では、AIを導入しても十分な効果を発揮しにくく、投資対効果が見えにくいという問題が生じます。

目的不明確な導入の落とし穴

さらに、「流行だから導入する」といった目的不明確なAI導入も少なくありません。課題設定や効果測定が曖昧なままでは、PoC止まりに終わるケースが増えてしまいます[4]。特に中小企業では、明確な成功イメージを描けないまま投資判断を行うことが難しい状況にあります。

さいごに

以上のように、日本のAI利用率の低さは「必要ない」「わからない」という表面的な理由だけで説明できるものではありません。その背景には、現状への安心感とリスクへの強い警戒心、そして制度・文化・人材といった複合的な要因が存在しています。

裏を返せば、失敗を許容し、小さく試す文化を育てることができれば、日本でもAI活用は大きく前進する可能性があります。まずは身近な業務で試してみること、社内で議論を始めること──その一歩が、状況を変える起点になるはずです。

出典

  • [1] 総務省「令和7年版 情報通信白書」に基づく解説(Patent Topics Explorerブログ)
  • [2] 総務省「令和6年度 情報通信白書」データ(cokiニュース)
  • [3] 「生成AI、日本はなぜ世界に出遅れたのか – 構造的課題と文化的背景」(cokiニュース)
  • [4] 「日本企業がAI・RPAを導入しにくい理由とその打開策」(&BLD株式会社ブログ)
  • [5] 経済産業省 IT人材需給に関する推計資料(AI・データ人材を含む)

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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