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MCPの現在地2025|話題のプロトコルは今どうなっている?普及状況と最新動向を徹底解説

生成AIの活用が企業の競争力を左右する時代において、モデル単体の性能よりも重要な要素が浮上しています。それは、既存のSaaSツールやデータベース、社内システムと「いかに柔軟かつ安全につながるか」という統合力です。従来のように個別APIごとに専用コネクタを開発する手法では、統合コストが爆発的に増大し、運用の持続可能性も損なわれます[1]。

こうした課題を解決する鍵として注目されているのが、2024年11月にAnthropicが公開したMCP(Model Context Protocol)です。本記事では、業界の動向や最新の学術研究を基に、MCPの現在地を多角的に検証します。

MCPの本質|薄く広がる共通インフラとしての設計思想

JSON-RPCベースのシンプルなアーキテクチャ

MCPは、JSON-RPC 2.0をベースとしたクライアント—サーバー型プロトコルです[1][2]。LLMを動かすホスト(クライアント)がMCPサーバーに接続し、「ツール」「リソース」「プロンプト」「サンプリング」という4つのコア機能を交換します。トランスポート層としてstdio(標準入出力)とHTTPを規定しており、ローカル環境でもリモート環境でも柔軟に動作します[2]。

この設計の核心は「薄さ」にあります。MCPは複雑な状態管理や高度なオーケストレーション機能を持たず、LLMが外部リソースにアクセスする際の「最小限の型付きインターフェース」に徹しているのです[2]。

豊富なSDKとリファレンス実装

公開時点でPythonとTypeScriptのSDKが提供され、その後Java、Kotlin、C#、Go、PHP、Ruby、Rust、Swiftなど主要言語へと展開されました[3]。さらに、Google Drive、Slack、GitHub、PostgreSQL、Stripeといった主要SaaS・開発ツール向けのMCPサーバーがオープンソースで公開されています[1]。

Claude Desktopアプリからローカル環境のMCPサーバーに直接接続できる機能により、開発者は自社固有のデータや社内システムを簡単に統合できます[1]。仕様・SDK・代表的コネクタがセットで提供されることで、MCPは実運用に耐えうる水準までに整備されました。

主要ベンダーの採用動向|事実上の標準への道筋

驚異的なスピードで進んだベンダー横断採用

2024年11月の公開を皮切りに、MCPは驚くべき速度で主要ベンダーに採用されました。Block(SquareやCash Appの親会社)やApollo、開発ツールベンダーのZed、Replit、Codeium、Sourcegraphなどが早期導入企業として名を連ねています[1]。

2025年3月、OpenAIがChatGPTデスクトップアプリ、OpenAI Agents SDK、Responses APIなどにMCPを標準で組み込む計画を発表しました。さらに同年4月には、Google DeepMindのCEOが今後のGeminiモデル群でMCPサポートを行う方針を表明しています[4]。Anthropic、OpenAI、Google DeepMindという3大モデルベンダーが揃ってMCPを採用することで、「どのLLMを選んでもMCPサーバーで統合できる」という未来も現実味を帯びてきています。

インフラ層への浸透が示す構造的変化

MicrosoftのSemantic Kernelでは、MCPツールをプラグインとして扱う方法が公式に解説され、Azure OpenAIとの統合例も公開されました。また、Cloudflare上にリモートMCPサーバーをデプロイする方法が公式ブログで紹介されました[4]。

この動きは、特定ベンダーの囲い込みではなく、業界横断での「共通インフラ化」が進んでいることを意味します。MCPは「どこにでも挿せるポート」になる前提条件をほぼ整えたと評価できるでしょう。

エコシステムにおける位置づけ|競合ではなく階層構造

4つのプロトコルと段階的ロードマップ

2025年時点では、MCPだけでなく複数のエージェント向けプロトコルが存在します。IBMのBeeAIが主導するACP(Agent Communication Protocol)、GoogleのA2A(Agent-to-Agent Protocol)、分散型のANP(Agent Network Protocol)などです。

最新の学術サーベイは、これらを「段階的に積み上げる層」として整理しています。具体的には、以下の4ステージが提案されました[2]。

  • Stage 1(MCP): LLMと外部ツール・リソースの接続を標準化
  • Stage 2(ACP): RESTベースのリッチなマルチモーダルメッセージング
  • Stage 3(A2A): エンタープライズ規模のエージェント連携とタスク委譲
  • Stage 4(ANP): 分散型識別子によるオープンインターネット上のエージェント発見

つまり、MCPは「Stage 1の土台」として位置づけられ、その上にACPやA2A、ANPが重なる構造です。「MCPを前提に、その上でどの上位プロトコルを採用するか」が論点になりつつあります。

プロダクト開発への実践的示唆

ツール開発者の視点では、「MCPサーバーを1つ実装すれば、Claude、ChatGPT、Geminiなど複数のLLMベンダーからアクセスしてもらえる」構図が見えてきます。これは、ベンダーごとの専用プラグインをメンテナンスするコストを劇的に削減します。

アプリケーション開発者から見れば、「MCPクライアントとしてAIアプリを構築すれば、社内外のMCPサーバー資産を柔軟に差し替えられる」ため、ベンダーロックインを緩和できます。

セキュリティとガバナンス|標準化がもたらす共通言語

明らかになった脅威とその意味

MCPが標準化されつつある一方で、セキュリティ上の課題も明らかになっています。2025年の複数の研究では、プロンプトインジェクション、ツールの権限組み合わせによる情報窃取、ツールなりすましといった攻撃ベクトルが報告されました[4]。学術サーベイでは、「Installer Spoofing(インストーラーの偽装)」「Tool Poisoning(ツールの改ざん)」「Tool Redefinition(ツールの再定義)」などが整理されています[2]。

重要なのは、これらの指摘が「MCPをやめるべき」という議論につながっていない点です。むしろ、「標準プロトコルの上でどう防御・監査するか」という運用設計の問題として認識されています。

運用設計への実践的アプローチ

MCPは「セキュアなゼロトラスト・フレームワーク」ではなく、あくまでJSON-RPCレベルの「薄い」プロトコルです[2]。標準化されたメッセージ形式があるからこそ、ライフサイクルごとの脅威一覧や企業横断のベストプラクティスを共有しやすくなっています。

組織としては、署名付きツールマニフェスト、サンドボックス環境、権限スコープ管理といった対策を標準運用に反映させることが求められます[2]。

実務への提言|2025年時点での合理的選択

エージェント活用を本格化させる組織への推奨

今後2〜3年でエージェント活用を本格化させる組織には、以下のアプローチを推奨します。

まず、ツール・データ接続は「まずMCP対応」を検討すべきです。内製APIや社内システムとAIをつなぐ際、「MCPサーバーを1枚かませる」設計を取り入れることで、複数モデル間の切り替えと併用が容易になります。逆にモックアップの作成などスピード感を要するタスクではあえてMCP対応を取り入れないという選択肢も考えられます。この場合でも、本格的な実装フェーズに入ってからMCP対応を前提とした設計に切り替えることは十分可能です。

次に、エージェント間の通信・オーケストレーションは、当面各ベンダーのフレームワークを採用しつつ、Stage 2以降のプロトコルの成熟を待つ戦略が現実的です。ツール接続はMCPに寄せておくことで、将来のプロトコル切り替えコストを抑制できます。

セキュリティ設計では、ライフサイクル別の脅威と対策を自組織の標準運用に反映させましょう[2]。

PoCレベルに留める組織への代替戦略

まだ本格的なエージェント投資を行わない組織であれば、短期的には各モデルベンダー固有のツール呼び出し機構を使い、MCP導入を「次のリニューアル時」に回す戦略もあります。ただし、将来MCPに移行できるよう、明確なスキーマとステートレスなエンドポイント設計を意識しておくことをお勧めします。

さいごに

2024年11月の公開からわずか1年で、MCPはAIエコシステムにおける「最下層インフラ」としての地位を確立しつつあります[1][2][4]。今後のAIエージェント競争は、「MCPという共通レイヤーの上で、どう差別化するか」にシフトしていくでしょう。

ツール開発者もアプリケーション開発者も、この「薄い共通レイヤー」を前提とした設計思想を持つことが、中長期的な競争力の源泉となります。2025年のMCPは完成形ではありませんが、AIと外部世界をつなぐ「最初の一歩」として、多くの組織が踏み出すべき道筋をすでに示しています。あなたの組織も、この潮流をどう活用するか、今こそ検討を始める時期ではないでしょうか。

出典

この記事を書いた人

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Yuji Oe

ソリューションサービス事業部

10年以上の業界経験(主にデータベース分野)を生かし、現在はSmart Generative Chatの導入のプロジェクトマネジメントを中心に活動。

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